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「〇〇さんって気持ち悪いと思わない?」気持ち悪いのは何? 本当の意味に気づく会話 

「気持ち悪い」という言語は、多様性があり色んな場面で使われます。車酔いや二日酔い、胃もたれなど身体的な症状からくる気持ち悪いや、見た目や視線が気持ち悪いなど何かを連想させるイメージからくる気持ち悪さ、また、生理的に爬虫類が嫌いで気持ち悪いとか様々あります。他に、生(なま)の生(せい)に触れたときにも気持ち悪いと言います。
※肉への直接知覚のこと

先日クライアント様からこのような質問がありました。
「『○○さんって、気持ち悪いと思わない?』と、開口一番同僚に話しかけられました。『ずっと新人の子につきっきりで毎日傍で指導してる。いくらパソコンの椅子が一つだからって、二人で一つの椅子に座って指導する必要ある? それは指導じゃないでしょ。〇〇さんもちゃんと自分の仕事をすべきよ!』と熱く語ってきました。私はそんなものだと気にならなかったのに、熱弁を聞いているうちに段々そうかなと思ってきたのが何だか不本意で、何があんなに気持ち悪いのですか?」

このクライアント様は60代女性、工場のラインで働いています。先日20代前半の女性社員が入ってきて、その女性に上司が指導している状況に対しての同僚との話でした。

同僚は、新人女性につきっきりで傍で指導している上司の姿を見て「気持ち悪い」と表現しています。この気持ち悪いは、生(なま)の生(せい)に触れたときの気持ち悪いに該当します。これは「ちゃんと自分の仕事をすべきよ」とか正論に戻すような話ではありません。

同僚の生の生に触れた気持ち悪いとは何か。どうしてそれを気持ち悪いと言うのか。相手に引きずられないためにはどうしたらいいのか。一つ一つ解きほぐし、同僚の言った「気持ち悪い」について説いていきます。

目次

仲睦まじい姿が気持ち悪いと思う理由

一つの椅子を二人で分け合っている上司と新人女性の姿は、仲睦まじい姿ではないでしょうか。それは悪いことではありません。

同僚が気持ち悪いと言っているのは、本当は羨ましい、羨望になります。自分の辞書(自分の経験から安全と危険、好き嫌いを区分する主観的辞書)により、「羨ましい」という抑圧した感情を「気持ち悪い」と言い換え、換喩してしまいました。彼女は、本当は知っています、無意識では羨望していることを、嫉妬していることを。

新人ではなく私がその椅子に〇〇さんと座りたい。ずっと傍についていて欲しい。しかしその思いを抑圧している為に、自分の辞書には嫉妬と怒りと憎しみという言語しかないから、気持ち悪いと言わざるを得なかったのです。

それは自分の気持ちが「気持ち悪い!」。この年で焼きもちを焼くなんて、そんな気持ちが気持ち悪いと言っています。「20才そこそこの娘と齢60才を越えた私が張り合うのは醜くいでしょ、焼きもちを焼くなんて」と、彼女が自分自身に向かって言っているのです。
彼女は自分を見てしまいました。そして自分で自分を評価して「あー気持ち悪い! 何で20代の娘と張り合うんだ、張り合ってどうするんだ」と。

しかし、女性に年は関係ありません。「羨ましい! 傍にくっ付いて、それも一つの椅子を二人で分け合ってるなんて」と、同僚は抑圧した生の生に直面してしまったのです。

クライアントは一緒に気持ち悪いと言えば、同僚と同じ自分も嫉妬していることになります。クライエントは嫉妬した同僚の自我に同一化した為に、一緒に気持ち悪いと思うようになってきた。それは不本意なのです。

自分の生の生、生の欲望を見た

これは言葉の不適切から始まっています。適切な言葉は羨ましい、羨望、唯それだけの事です。「私にもしてよ。なんで私の時は離れていくの?」と、素直に羨ましいと言えば終了。ユーモアとして笑い話にできます。素直に表現すると怒りもストレスも無くなります。羨ましいと認めないから、一生懸命次々と気持ち悪い事例を語ります。

二人の姿を見て自分の生の生、生(なま)の欲望を見て生の生に触れたため、私もまだ女だったと気づいて「どうしたらいいの?」と、年を忘れて嫉妬する私が気持ち悪いに至りました。そうされたい欲望を見ました。
その欲望を自分で認めない限り、彼女は最後には吐き気へと身体化して吐くことになります。

伝えようと必死に語ることで自分の感情や欲望に気づく

同僚は気持ち悪い理由、事例を一生懸命語ります。ずっと傍に居て気持ち悪い、つきっきりで。最後は椅子に二人で座って、と。そんなに事例を言わなくても最初の段階で羨ましいのは判ります、気持ち悪いと言った時点で伝わっています。

しかし語り手はちゃんと伝わったかどうか不安で言葉を重ねます。どんどん判るようにこれでもダメならこうとか、様々な言い方で必死に伝えようとします。判り易く説明しようとします。この段階が、語り手である同僚の気づきに繋がります。

それは聞き手のクライアント様が自分の辞書を使わず、黙って聞いているため、持てる限りの言語で伝えようとするからです。そのために思いがけず語り手は自分の感情や欲望を知ることになります。

相手の意見に流されないための会話法

同僚との会話をクライアント様がどのように応えて会話すればよかったのかを再現してみます。
同僚:「つきっきりで指導してて気持ち悪いと思わない?」
クライアント:「どこが気持ち悪いの?」

自分にはそうは見えないのだから、そのまま相手の気持ち悪いは何かを問う、そして相手の意味を訊きます。するとどうしても同僚は伝えたくなる。「気持ち悪い」を説得したくなります。自分と同じ見方に洗脳しようとします、何処までも。

クライアント:「私にはそう見えない。どうしてそう見えるの? 一つの椅子にお尻半分づつ座って仲睦まじくていいじゃない。何をあなたは考えてるの? 嫌らしい」

と言います。そう言われると自分が何を妄想していたのか判ります、あの二人はできてるなとか。これで同僚は墓穴を掘ることになり、最後は、私は羨ましいんだと気づきます。

そして
クライアント:「あなたが座ってみたとき〇〇さんはどうするだろうね」
同僚:「もうそれ以上言わないで」
と、あ~言うんじゃなかったと思うのではないでしょうか。そして自分の生の欲望に気づき意識します。意識できれば、もう吐くことはありません。

クライアントには、「同僚の話をそのまま聞き、また訊くことで、同僚が無意識で書き換えた言語を自分自身で気づきます。そして意識することで吐いて身体化することは無くなる。そうなればあなたは同僚に感謝されますよ」と話しました。

人間的会話のきき方 背景には尊重と対等と受容と信頼がある

このように会話では、聞き手は常に相手を立てながら尊重しながら、語り手が矛盾に気づくような会話をします。それには決して相手の言っていることを思い込まない、予見を持たないことが重要です。猶且つ教えたがらないこと。そのようにして語り手の話を聞くことができれば、語っている言語の意味を理解するために問いが出てきます。

すると語り手はその問いに答えようと一人で語って、語りながら自分でも気付かなかった自分を知ることができます。人それぞれの「気持ち悪い」は、会話により明らかになっていきます。

このように会話は尊重と対等と全てを聴いてくれるという信頼を背景に、人と人は人間的会話ができるようになります。


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