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ブログ  精神分析家の徒然草 

《天女》徒然草-145

何年か振りに電車に乗り、東京へ足を運んだ。これ又何年か振りにコンサートを聴いた。オーディオ機器を通しての人工的音の配合の合成音を聴いているだけでは、現象学的かつ現実的音とは別物すぎるために、時折りその差異の修正と人工音の再構成をする為に、時々生の音を聴きに行く。

そこは新橋にある「朝日ホール」だった。5,6百人収容の長方形の木調のホールで、席はズレて配置されているので、前の人の頭の間に席があり、ステージが丸々見える。僅か1度か2度の開きなのに、演奏者の動きが総て見える。



当日は、チェロとハーブのデュオだった。演目は総てフォーレの曲で、11月4日はフォーレの生誕百年に当たり、命日だった。

7月に買ったチケットで、何を聴きに行くのか、全く覚えがなく、当日フォーレの命日の記念コンサートと知った。メインは勿論「レクイエム」である。全曲をチェロとハーブで奏で、それ用に編曲したものだが、うまくまとめられていた。

フォーレの落ち着いた、平明な光の中に清明なメロディーはまるで侘びそのものである。幽玄な施律とテンポは、一小節聴いただけでもフォーレとすぐに判る。

本題の音であるが、チェロの音域は低音部に中心があるが、これが生音は正しくヴァイオリンの仲間である弦楽器であることを教えてくれる、高域の音の成分がキラキラして響くのだ。一瞬ヴァイオリンが後でユニゾンを奏でて、重奏しているのかと思ったほどに。この高音の成分は、オーディオで聴いた事がなかった。



ホールという音響特性による、直接音と間接音の混じり合いによって生じる響きなのか録音でイコライジングしてチェロの音を作っているのか定かではないが、余りのチェロの甘い響きと息の長いメロディーに酔いしれた。流石に「レクイエム」は圧巻だった。

天上の音楽といわれるように、そのメロディーに乗って、平等院鳳凰堂の壁の合奏する天女たちが舞い降りてきたのを、確かに見た。

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