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ブログ  精神分析家の徒然草 

《奇跡の人》徒然草-125

日々の繰り返しの生活のある現前、ふと何の脈略もなく浮かんでくるイメージや言葉、唄の断片的フレーズとメロディーがリフレインすることがある。その契機が何なのか全く判らず、同じ詩とメロディーを口ずさむことがよくある。それはまるで強迫観念のように執拗に現れる。

そんなある日、ふと現代絵画がみたいと思った。クリムトやムンク、シャガール、マグリットや印象派の絵や古典になるだろうダヴィンチやゴッホなど観てきたが、ふと現代画家による、存命中の人が描いた絵を観たくなった。意図も根拠もなく、純粋に思いつきである。



そんな時、熊谷のある処を車で走行中、信号で止まった交差点で『新光苑美術館』と書かれた大きな看板が目に入った。右折して1.5km先とあったので向かった。ほどなく、看板があり、駐車場に車を止めた。その建物は障害者施設だった。

職員に声かけて確かめたら美術館に間違いなかった。恐る恐る半信半疑で中に入ったら受付があり、入場料を払い入った。入るなり、いきなり「シオンの娘」の石像が目に飛び込んで来た。

そこに館長がやって来て、この像の台は1,500万円したと解説が始まった。これ以降二時間余りに渡り絵の説明を聞くことになった。一点一点作家と絵の手法とテーマや色について語り続けた。私は唯ひたすら感心するばかりで、その購入額の高額さと、300点に及ぶ取集された絵が、施設の壁という壁にすき間なく櫛比していた。



中でも小学校の体育館のような食堂に展示された一枚の絵は、左右10m以上、縦2m超の大作には圧倒された。そこは食堂兼、遊び場でもあり、障害者と職員が通常生活している。美と人間の生の生が渾然一体となってその空間を占めていた。

この様な美の展示様式は世界中見渡してもここだけだろう。熊谷は奇跡の地だと思った。私も奇跡の人になりたい。

 

精神分析家 蘇廻成輪

 

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