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ブログ  精神分析家の徒然草 

《もう、戻れない》徒然草-114

世界の、いわゆる地球上の平均気温が1.5℃上がったら、もう地球は元の正常な気候に戻れない臨界温度なのだ。

それまではまだ20~30年の余裕があり、それまでにカーボンを0にしようと世界中の国と人々に呼びかけていたが、その温度まで0.01度とニュースで伝えていた。もう来年には、戻れない地点まで地球は、その限界まで迫っているのである。

私は唯々啞然とした。人類が生息していける地球環境は、カーボンニュートラルを達成する前に、壊れてしまうのである。いや、既に壊れている。温暖化といわず、地球は沸騰していると、今年は報道されている。現に35℃超えが続いている。痛いほどの熱線を感じる屋外に出ることに危険を感じるほどの暑さだ。



化石エネルギーから再生エネルギーを叫ぼうと、もう戻れない地点に来てしまった人類に残された道は無い。海水も30℃にまで上がっている。台風もそれにより大型化し、災害がより広く大きく発生している。もう手遅れなのだ。

あの冷たく、青く澄んだ、臨海学校で見て、泳いだ小五の時の逗子の海は、もう記憶の中だけの海になってしまうのだ。

海のない埼玉県に生まれ育った私は、海をその日まで見たことはなかった。初めて見た海は広かった。そして鋭利な刃物で切ったような、水平線がどこまでも伸びていた。空の青さと海の青さはしっかりその境界を引いていた。空に浮かぶ白い線のような雲は、色んな形に見えて、空一面が雲が語る物語のように流れていた。



その日のために母は、三泊四日の着替えをバッグに詰めていく、真白い下着をビニール袋から出した。その白さと、シワ一つない、丸首シャツのすべすべの氷のような肌触りに、何故か感動した。母は黙々とそれをバッグに詰めた。その新調の下着に改まる心に背筋がピンと張り詰めたことを憶える。

母の臨海学校に送り出す親の想いがその下着にこめられていることを、ひしひしと感じた。

もうその頃には戻れない。そしてあの逗子の海にも戻れない。それより何より、地球は、人類が生きていける青い地球はいつまであるのだろう。すべてが、もう……。

 

精神分析家 蘇廻成輪

 

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