《 ピラミッド 》徒然草-159

その言葉を今でも憶えている。当然そうなれば、私の暮らしも豊かになるので、その恩恵は必ずこうむると思っていたからだ。しかし、それは夢物語であったが、後年百姓が専業でなくなった頃、1万2千円くらいになった様な記憶も定かではないが、ある。それにしても、今なら1俵は60kgだから、5万円になる。

この事を墓に眠る父に伝えたところで、俄かに信じ難く、冗談にされてしまうだろう。時代は変わり、人も変わり、果ては地球も変わって、すべて無常のこの世の出来事は、泡沫の夢の如く、定めなく、流れていく。
物価で言えばガソリンも私が大学に通っていた頃は1ℓ50円だった。しかし、今は180円前後する。これも3倍以上になっているし、ラーメンも新宿のガード下で食べた頃は50~80円位で、百円で食べられた様に記憶している。これを言い始めたら切りがないが、物の値段は定めなく上昇し、時代や歴史を消し去っていく。
幼少期、明治の人と共に生きて、昔の人と現代を生きる自分を比較し、根拠のない優越に浸っていたが、今は平成の生まれの人から見れば昭和の人間は、当時の私の目線と重なり、きっと生きる化石に見えることだろう。

歴史は常に現代が化石となった過去にして一括した堆積物にしてしまう。それを又何千年後かに、掘り起こして、今に蘇らせて、現実にする。過去が今となって現れて、歴史を書き変えるのだ。過去を掘り起こして今に蘇らせる試行は、精神分析そのものである。
そこには常に財宝が隠されている。人間は心の奥底に宝がねむっているピラミッドなのだ。