《幸運》徒然草-144
私は自らの存在・分析家としての修業時代として10年の潜伏期間を想定し、黙々と臨床に励み、分析力の向上を目指し、理論も勉強し続けた。そして17年後に、蝉のように地上に羽化して、社会に分析の科学を世に出し広めると決めていた。
にも拘らず、羽化出来なかった。地上の人々は私を無視した。いや分析の説く科学を誰一人理解出来なかったのである。
こうして再び地に潜った。しかし、その13年後の分析を始めて30年の後も結果は同じだった。今年分析を始めて34年経った。そこで、13×17=221の数字に出会った。もう、今生では羽化も黙殺されるしかない運命なのだと悟った。その最後通告をしてくれたのが、17年蝉と13年蝉だった。
それでも生きていく意味を何処に求めたらいいのだろうか、と神に私に自問自答せざるを得ない。答えは無い。分析の科学を共に広めようという同志は現れず、分析は唯クライアントの幸せをつくるのみで終わっている。
人類の英知というが、その英知を持った人は何処に居るのだ。リクルートして探し出すしかないのかもしれない。
しかし、実は30年以上分析していると、分析の才能を持った幾人かのクライアントに出会っている。が、分析者になることを勧めるが「嫌いです」の一言で一蹴されて終わる。
分析に身命を賭けるなど、もっての外なのである。市井の人の幸せに行ってしまう。私はそれ故、誰一人の理解者もなく孤独を生きている為、そのお蔭様でラカンとフロイト、そして空海と向き合い「対話」せざるを得ない状況に追い込まれた。それが私の唯一の幸運である。