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ブログ  精神分析家の徒然草 

《時の鏡》徒然草-103

人は語る。何を語る。心の裡に秘めた想いを、或いは訴えたいことを、分かって欲しいことを、熱い心情を。

2023年3月28日亡くなった坂本龍一氏も、熱く平和を訴え、命がけの作曲と活動を行って、天寿を全うした。志や思いが半ばで、やり遂げることがなくても、人はそれを行動化している限り、最期まで諦めずにやり続けることが、全うすることなのだ。

その意味で彼は、芸術のみならず、人類に対して活動し続けた。それは平和を実現するための一助として自らを投じた。



音楽は聴覚を通した人間の感性と情緒への語りかけであるが、行動は視覚に訴え、知覚を通して考える脳に行き、言語となって思想・主義・理念・概念を創り出し、世界中の人の脳に届く。人種を超えて言語は翻訳されて、その考えを共有できる。

五色人種は言語を介して概念で一つとなって、同じ想いと価値観や感動でつながれ、音楽がもたらす国境を越えた喜びを共に味わえる。

生きていることは、幸福感や満足、価値や力を持つことで感じるものではなく、そこはかとなく、心の奥底から湧き上がってくる清流の煌めきにこそ潜んでいるものではないか。



生命は煌めきながら流れている川のように、澄んで、どこまでも透明で明晰さこそ、その本質を現している。時の流れそのものが、川の流れにあり、川は時を映し、光を反射し、自然を映す。川は流れているのに、その自然の景色は動かずにそこにその姿をとどめている。

川は、時の鏡と言える。音楽も一音一音は水滴の連なりが川をつくり、大河となって海に注ぎ、大洋となるように、一音が連なり、重なり合って交響曲となる。

坂本氏は音によって生命を表現した偉大な音楽だった。

 

精神分析家 蘇廻成輪

 

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