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精神分析者の徒然草  ブログ 

徒然草-92《小さな幸せ》

「アンコール、アンコールツアー」以来、小田和正君が埼玉スーパーアリーナに「こんど 君とツアー」で帰ってきた。数年振りの再会で、齢75歳に小田君はなっていた。流石にハート形の花道をかつてのように疾走することは無かったが、のんびり散歩するようなゆっくりとした足取りで歩いていた。

その心の落ち着きと豊かさが歌い方に表れていた。いつもは力強く唄うのだが、一言一言、一音一音丁寧に吟味しながら朗朗と歌い上げていた。ミキシングも小田君の魂の唄を強調するように、バンドの音は控えめに、ベースの低音やバスドラは抑え気味にして、ボーカルを際立たせていた。22,000人入るホールに響き渡り、突き抜けていた。

音響・照明・構成が全く変わり、一新した新生小田和正のステージになっていた。特にその中でも音が良かった。最新のデジタル技術による音のコントロールはその歪のなさと、ノイズのなさに尽きる。



70~80年代は、ブーン、キーンといったハム音は当たり前で、唯ガンガン大音量で客を圧倒するだけの虚仮威しのPAでしかなかったが、今や、洗練され、透明感溢れる歪のない高域を実現していた。時代は美しく、そして華やかに、心湧き立たせる演出と照明により、小田君ツアー史上最高のステージだった、と彼自身も感じていたことだろう。

惜しむらくは、体と若さであろう。今のこの音で、オフコース武道館ファイルコンサートを出来たなら、とふと考えないこともないが、それは詮無いことだ。

こんど いつ小田君のコンサートに会えるのかと考えるとそれも遠く天空の彼方に消えていく。人の世の宿命とはいえ、どうして人間の終末は儚いのであろう。



来し方を振り返り、幻になった記憶を辿ったところで、どうにかなるものでもなく、唯々ノスタルジックに浸り、メランコリックな気分になるだけである。

だから前を向いて「今度 君に会う時は やさしい季節に包まれてるだろう~ 想う人がいる 想ってくれる人がいる 小さな幸せが支えてくれる~ 」そして唄の終わりに彼はこう歌う。

「もう少し この先へ行ってみよう もう少しだけ」と。私はもっともっとこの先へ行ってみよう。想ってくれる人がいる小さな幸せに支えられて。

 

精神分析家 蘇廻成輪

 

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