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ブログ  精神分析家の徒然草 

《何処へ?》徒然草-75

2月13日BSで南極極地に到達した世界初一番乗りしたアムンゼンをプロファイルした番組を観た。結局最期は同朋の飛行士ノビレの遭難の救護に出発したまま消息を絶ち未だに行方不明である。

数々の冒険の危機をくぐり抜けて来た彼は、言うならば呆気なく消えてしまった。彼は一体何処を目指して飛んでいったのだろうか。幾多の困難な生死を賭けた冒険には奇跡的に生存し続け、友の救護という形の友情に向かった彼は、消えた。

そして又、55歳になって初めて女性を好きになり、交際し、結婚する段取りになっていた。普通のしあわせと生活がすぐそこに待っていた。しかし、彼はその一般の人が普通に手に入ることのできる生活を手にすることが出来なかった。



彼にとって生死を賭けた冒険よりも普通の生活を送る方が、何倍も難しいことだったのだろう。過酷な自然に立ち向かい、極地を目指す体力と精神力があれば、日常生活は容易いことだと思うのだが、それが人間の脳は全く違う脳の働きによって冒険と日常は区分けされていることを知る。

アムンゼンと全く同じ脳構造を持った冒険家が居た。2月13日が命日とされている植村直己氏である。43歳でマッキンリーで消息を絶った、行方不明の植村氏もまた、アムンゼンと全く同じ脳構造である。彼は結婚し、奥さんを日本に置き、独り冒険に明け暮れていた。

冒険の新記録を数々樹立し、もうすることのなくなった彼は、自然と共生して生きていくことを教える学校を設立しようと次のヴィジョンをもった。それに向かいマッキンリーに行く。ついでに頂上を目指し冬山を単独登っていく。本来その山は単独は禁止で、4名以上でないと登山できない規則だが、彼は特別で許されて独り又しても登って行った。



何の為の登山なのか、と素人の凡人は考えるが彼はこう言う「登りたいから登るんだ」と。グリーンランド縦断1,200㎞も、スポンサーから「その冒険の士気は何か?」と問われて、彼は「何もありません。私がしたいからする冒険で、意味はありません」と答えた。意味がないのだから、それを冒険と言うのは当らない。

彼の冒険は全く私と同じだ。他者から「何故、分析家になったのですか」と問われたら、私は一言「分析が好きだから」と応える。生きるとは、唯、好きなことをするだけ。アムンゼンも植村も何処に向かっていったのか、何を目指したかったのか。

 

精神分析家 蘇廻成輪


 

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