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ブログ  精神分析家の徒然草 

《委任》徒然草-71

ミュージック・セラピーの効果は、明確に体感できる。それは、体が軽くなる。まるで温泉から上がった爽快さと軽さと、ホッとする安らぎである。体も心も癒えるというのが的を射ている。

二時間余り、クラシックの名曲といわれるあらゆるジャンルの曲を聴く。バロックから近代まで、テーマを選んで、それに相応しいと想える曲を私自身が選んでプログラムする。

名曲の持つ周波数は心にも体にも心地良く響くことが、これまでの十数回に及ぶ開催からそれは証明されている。クライエントの聴いたことのない馴染みのない曲でも、確実に感動を与え、癒えさせる。全身に音のシャワーを浴びる体験は、個人差や個性の違いを超えて等しく心と体の洗浄を施す。

そのメカニズムを一度も考えたことがなかった。それを知る必要もなく、唯々効果を享受していた。だが、ある時ふと考えた。何故心が軽くなり、体も楽になるのかと。そして気付いた。



一つに、先ず再生させる音がもたらすものだ。オーディオの基本は、音の基礎になる低音である。この質感と量感、そしてそのスピードによって良し悪しが、心に届く気持ち良さが決まる。質はドローンとした音ではなく、ビシッと引き締まったものでなければならない。そしてその音がたっぷりとした量感を持って、素早く耳に届かなければならない。

何故なら20Hzは20,000Hzの高域に対して遅くなるからだ。高域が先に耳に届き、音の時差が生まれ、音の合成にズレが生じて響きが滑るからである。その証拠に、高域の1.23Hz以上の音圧(dB)を変えると、低音の音質が変わる。

そこで、低音の次は高域の良さに関わることが判る。その合成が中音となる。中音は人間の声域になり、ボーカルがそこで、生きるか死ぬかが決まる。人の声が生々しくなれば、人は安心してその音楽に身を委ねることが出来る。



この時私はハッとした。そうだ、人が音に癒されるのは、この心を音に委ねて、暖かく包まれる、赤子の時の母の懐に抱かれている疑似体験がそこに再生されるからなのだと判った。

体も心に合わせて、音に身を委ねる。こうして音と曲に心身を預ける。
完全委任こそ癒され体験なのだ。

 

精神分析家 蘇廻成輪


 

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