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ブログ  精神分析家の徒然草 

《修験道》徒然草-67

月に一度ミュージック・セラピーを行っている。テーマを決めて選曲し、三十年の歳月をかけた我がオーディオ装置で、鳴らす。マルチシステムの調整は天文学的要素の組み合わせがあり、それを自分の耳だけを頼りに理想の音に近づけていくのだ。

機器を替え、コードを替え、接点を磨き、電源をキレイにして、全体の音を整える。中でも重要なのは、イコライザーである。スタジオミキサーに成り切って、各音域をイコライザーしていく。20Hzから20,000Hzまでを何十分割して各音域の出力を変えていく。

そして各音楽ジャンルに合ったイコライザーをして、波形をつくっていく。クラシック、インストルメンタル、ヴォーカルレコード、CD用とそれぞれ音を仕上げていく。

そんなことをしていたら三十数年経ち、漸く聴いてもらえる音になった。



当日私は三回聴く。体は清らかに洗い流され、正に洗心される。体感的には体は軽くなり、心的には精緻にして清明な心になり、清々しい気分になる。

明らかなる音楽による治癒効果は認められる。心が癒えるのは音の持つ振動数であろう。20~20,000Hzの可聴域の振動数が体に及ぼす作用は、60兆個の細胞に至る。正に体全体が揺さぶられ、活性化するからであろう。

各細胞によって共鳴する振動数は異なり、その最も共鳴する周波数を組み合わせたのが、名曲といわれる音楽である。

音楽は時間芸術により、滝のように、シャワーのように音が絶え間なく、体と心に降り注ぐ。連続する音の洪水は、まるで修験道の行者が滝行するように、ミュージック・セラピーは正に音による滝行に相当する。

そして沈黙して二時間座り続けて唯傾聴するだけの不動の姿勢は、座禅そのものである。

音楽を聴くとは、修験そのものになる。何も山野を駆け巡らなくても、在家でJ.S.バッハの音楽を聴くだけで、修行していることになる。これを1,000日続ければ、千日回峰行になる。それで在家の阿闍梨になれる。



音楽の効果はそれだけではない。音の美を観るのである。バッハの音楽には、宇宙が見られ無伴奏のヴァイオリンやチェロの曲を聴いていると、銀河がみえてくる。
それは、心を無にして、沈黙の世界に心を置いた時に、その無の空間に音が輝き放つのである。

音は色になって、無音であるが故の沈黙の中で光彩を放つ。
それが音楽の持つ深秘である。

 

精神分析家 蘇廻成輪


 

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